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2023-04-01から1ヶ月間の記事一覧

上昇志向

その若者は、上昇志向の強い人だった。配属されたところが不満で、学び直しのために大学院へ進みたいと、飲み会の席で語った。先輩連から総攻撃にあったのは言うまでもない。今ならパワハラとか何とか言われるのだろうが、今から30年以上前だから、潰すこ…

幹事さん

就職した初年度、職場の親睦会の幹事になった。もちろん一人ではなく、何人かの人たちと一緒に。謂わば幹事の下働きのような役割だった。職場から然程遠くない一棟貸しの施設で宴会のときには、持ち込みのビールケースを運んだ。細々とした雑用をしたはずだ…

好きなもの

一人で飲んでいると、手持ち無沙汰なのか、話しかけてくる女将さんがいた。何が一番好きですか?これさえあれば、ご機嫌だというような。むろん、酒の肴の中で…という文脈だが。実は、これが一番というものがない。食べられないと思うものは少ないです。と応…

シュレッダー

事業所ごとの可燃物焼却処理が出来なくなったのは30年ぐらい前だったか。以降、書類はシュレッダー処理して可燃物引き取りの業者へ。資源ごみとして出すものもあったが、書類の中身を考えると、シュレッダー行きが、どうしても増えてしまう。機械の中には…

不機嫌な街

久しぶりに梅田の地下街で串カツを食べた。馴染みの店は、昼には少し遅い時間だった所為か、立ち飲みカウンターが閉じられ、テーブル席だけになっていた。揚場から遠い、低いテーブル席に座る気持ちにはなれず、すぐ近くの別の店へ。そこは、丸いカウンター…

チョコレート・セット

いつものように古い歌を聞きながら夕暮れの道を歩いていた。辿るコースは限られている。越してきた時にはあった本屋もCDショップも飲み屋も、今はないからだ。僅かに眺望が開け、山と山の狭間に海が見える場所がある。足が停まるのは、眼下に中学校と、亡く…

一人焼肉

何も食べる気がしない。盆過ぎに見た老婦人を思い出す。半日の出張は思ったとおりの内容。そこから職場へは戻る気持ちになれなかった。少し遅くなったが、昼食として韓国冷麺の店へ入った。震災前とは別の場所に移転。店の内部は以前よりは狭いが、見違える…

前日は真夏日。

前日は真夏日。飲み屋にかかっていたテレビでは、何か大事件のように報道していたが。私にとっては今日の前日差-6の方が、重大問題。適当な言葉がないから報道しないのだろう。むろん、一日引籠りだったから、テレビは見なかった。 こんなに寒いと、熱燗に湯…

猫と娘

串カツ屋で飲んでいて、娘に背中をつつかれたことがある。お父さんに似た人がいると思ったら、本当にお父さんだった。そう言って笑われた。娘は学校帰り。もう酒が飲める年齢になっていた。何でも注文していいよ。そう言うと、生ビールを頼み、串を幾つか。…

レーズンバター

レーズンバターを無性に食べたくなるときがある。時々立ち寄る店のメニューにあるから、そこへ行けばよいのだが。頭の中に、学生の時に通った店が甦る。店名は、何故かスコットランドの大都市。スコッチウイスキーがメインだったのだろうか?私は専ら角だっ…

酒の肴

その角打ちの常連客の一人、強面の人が亡くなった。入院先の病院から抜け出して飲んでいるようなトンデモナイ人だったが、退院してからも暫くは元気そうに飲んでいた。背が高くて、声が大きく、威圧感があった。直接は言葉を交わしたことはない。男子校でバ…

験担ぎ

一人黙って飲んでいても、何年か通っていると、顔見知りはできる。話はしないまでも会釈ぐらい交わすようになる。職場近くで出遭う人が、その飲み屋の常連客だと気づくのには時間が掛かった。早朝、7時前、自転車で走っていく人が、頭を下げたように見えた…

赤蒟蒻

唐辛子入りの板蒟蒻が好きだ。然したる辛味があるわけではないのだが、自分で買ってくるなら、それを選んでしまう。普段、妻が買わないということも関係しているかもしれない。 職場の数人で時々飲みに行くという時期があった。阪神淡路の震災前、もう30年近…

マヤカン2

マヤカンが廃墟になってからは当然ながら立ち入ったことはない。掬星台から見下ろして、緑の中に埋もれている屋上を確認した程度だ。掬星台付近には嘗て奥摩耶遊園地があった。小さなジェットコースターや、近くの食堂で初めて食べたハヤシライス。しかし楽…

マヤカン

今では廃墟として有名な摩耶観光ホテル。学生時代、夜通しの飲み会の会場として何度かサークルで利用した。建前上は研修という名目だったのだろう。西宮あたりで飲み会する金額で、泊りがけのコンパができた。酒も食材も全て持ち込み。食器や鍋、コンロの類…

雨天延期

仕事の都合上、現地で雨天延期と判断されることが多々あった。4月の終わりから5月上旬にかけての休日出勤は、そんなふうにして流れ、代替保証も手当も支給されなかった。諦めてはいたが、退職の年齢が近づく頃には、なんとも遣る瀬無く、雨天延期が決まる…

久しぶりの外出だったが、却って、気持ちが沈んだ。このままイヤな気持ちを持ち帰りたくない。体調は良いとは言えなかったが、軽く飲むことにした。氷無しの水割りウィスキーを頼み、品書きを見た。クジラ刺身とある。レーズンバターを頼むつもりだったが、…

鶴。或いは菊

もう何年も入ったことのない店だが。何かの振り替えで休みになった平日にだけ、その店へ行くと、美しい「ホール」係に会えた。上品な姿・声・笑顔。どうしてこんな美しい人が…と思うほどだった。女優の中には、清純な魅力を売り物にしていても、本人自身は、…

目玉焼きと出汁巻き

その店の品書きには目玉焼きがあった。注文すると千切りキャベツに両目の目玉焼きが乗っかってくる。ソース要りますか?と訊かれたが断った。掛けるなら塩だが、普段は塩も使わない。しかし、箸をつけてみて、ソース云々の理由が分かる。両面焼きではないが…

講釈

コンニャクが好きな男の人、多いな。naoko さんが言った。丁度、おでんの蒟蒻を食べていたところだったが、私に言ったのではない。カウンターの一番奥。壁に寄りかかって飲める常連客定位置にいる人に_だった。 好きやったら好きで言い訳せんでエエのに、な…

ごぼ天

おでん定食を頼んだ。御飯は少な目。店に入って先ず濁り酒を頼んでいるから、後から味噌汁と一緒に出してくれる。大根・蒟蒻・厚揚げ・玉子・ごぼ天が出てくる。ごぼ天が美味いと思うようになったのは50近くになってから。そもそも練り物は、おでんの出汁…

昆布

缶入り水割りウィスキーの2杯目。それが半分くらいになって袋入りのおやつ昆布を頼んだ。柔らかい方ですか硬い方ですか。と訊かれて、いつも硬い方を希望した。柔らかい方が酢昆布だとは思わないが、もしそうならウィスキーには合わない気がする。ウィスキ…

ノーマル

若い二人組が、その日の「ホール係」だった。二人とも痩せていて、一人は少しばかりヒョロリとしていた。昼の混雑が終わり、夕方までにはまだ時間のある暇な時間。ときどき聞こえてくる二人の話に耳を傾けていた。二人は別々の中学校だが、お互いに「大概や…

貧乏神

私の贔屓は、すぐになくなる。貧乏神に近いと妻に笑われること頻りだ。 角打ちの酒店で、お好みアラレを食べていた。三角形の小袋をカッターで切り、皿代わりのチーズの空き箱に出してくれる。その一袋ではあまりに少ないので、もう一袋、別のものを付け足す…

頑固

人と交わるのが苦手だ。飲むなら一人で。しかし、頑固そうな職人さんが渋面を作って仕事しているのを眺めるのは好きだ。人とのコミュニケーションが上手く出来なくても、ちゃんと生きていける_そんな気持ちになれる。 その店のカウンターの向こう側_調理ス…

妻の母親は若い頃、鳥取で暮らしていた。秋になると立派な梨が、私の家へも段ボール箱で届く。結婚してから、それはずっと続いていたのだが、それが不思議なことだと思うようになったのは実は最近のことだ。親族の誰も梨農家ではない。母親は数年前から記憶…

高野豆腐

立ち飲み酒房のコップ酒を飲むようになって、高野豆腐が美味いものだと分かった。好き嫌いはないから、食べないということではなかったのだが。母の煮しめの品目に、大根・人参・蒟蒻・薄揚げ・椎茸と共に高野豆腐が入っていた。肉の無い正月の御節料理が「…

氷なしの水割りウィスキー

角打ち酒店では、最初から水割りになっている缶入りウィスキーを飲んでいた。冷蔵庫から自分で取り出して、店の人に見せると、グラスを渡してくれる。氷は?と訊かれて断ると、何度目かからは訊かれなくなった。話好きで博識の「センセイ」から、氷が溶けて…

冷えていないビール

ビールを飲み屋で頼むことは滅多にない。歩き疲れた夏の日の生ビールが美味いのは分かっているが。飲まないのは、どの店も、冷え過ぎていて、中瓶ですら持て余す。冷房が効いている店内なら尚更のことだ。 頼めば、冷えていない瓶ビールを出してくれる店もあ…

適量

仕事帰りに軽く。私にとって、それはコップ酒2杯くらいだった。時には3杯になり、立ち飲み酒房のオヤジさんから、スリー・ドリンク?と一応の確認が入ったりした。それが今では、小さなぐい吞み一杯を持て余すことがある。健康的になったのか、それとも自…