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氷なしの水割りウィスキー

角打ち酒店では、最初から水割りになっている缶入りウィスキーを飲んでいた。
冷蔵庫から自分で取り出して、店の人に見せると、グラスを渡してくれる。氷は?と訊かれて断ると、何度目かからは訊かれなくなった。
話好きで博識の「センセイ」から、氷が溶けて薄くなるのがイヤだからですか?と尋ねられた。確かに最後は単なる氷水になってしまうから、それもあるのだが。冷蔵庫から取り出した缶は十分に冷えていて、氷が必要とは思えなかった。
「センセイ」の問いに曖昧な笑みを返すと、最初から水で割っていてアルコール度数が低いものに、氷は要らないか…と独り言が返ってきた。缶ビールや発泡酒を自分で取り出して飲んでいる客人は当然のように氷無しのコップを受け取っている。不思議なことに缶酎ハイやハイボールは背の高いグラスで氷を入れてもらっていた。私なら、ハイボールも氷は不要だ。「センセイ」に言われたとおり、最後まで同じ味で飲みたいというのが本音かもしれない。

氷無しの水割りウィスキーと頼むと、イヤな顔をする女性店員のいる店があった。水割りには、氷を入れるもんや_と窘める言葉もあった。
長いカウンターの、別のシマを受け持つ男性店員は、何の不思議な顔もせず、冷えたロックグラスに氷無しの、冷たい水割りウィスキーを出してくれた。