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夜中のトイレ

午前2時過ぎ。トイレに起きる。
夜中に2度くらい目が覚めて、そうこうしながら起床の5時前くらいになる。
妻のベッドの上にいる猫が、寝言を言っているのを聞きながら、暫く、心に浮かぶ言葉を追いかけていた。

動物園のパンダが死んだ。
妻は、その飼育日記をSNSでずっと読んでいた。
中国へ返さなくてはならないのだけれど、心臓が悪く、長旅に耐えられない。
そんなことを言いながら、奮闘する飼育係の人たちとパンダの様子に、一喜一憂しながらスマートフォンを毎朝見ていた。
彼女は実際に、そのパンダを見たことがあったのかどうか。
私は、仕事の都合で入園した際に、三度ほど眺めた記憶がある。どこかの動物園では行列ができるほどだと認識していたのだが、昼日中、ぼんやりとパンダを眺めていたのは数人くらい。パンダもごろごろ寝そべっているばかりだった。時間に終われ、仕事に追われていた当時の私にしてみれば、だらだらしている様に羨望のようなものを感じた。

或るドジョウ料理専門の店が閉じられていた。
初めて入ったのは、最初の職場、20歳近く年上の先輩に連れて行ってもらい御馳走になった。
その後、2度くらい。
妻と二人で行ったことも。
職場の飲み会で美味しかったと思う店へは私も連れて行ってね。家で美味しいものを食べたければ、それなりの資本投下が必要。
妻の口癖だった。
妻の口に合ったのかどうかは覚えていない。

容体を心配していたパンダより先に妻は亡くなり、ドジョウ料理の店も閉じられた。
彼女に話したいことが幾つも。
猫の寝言を聞きながら、
ril ちゃんは、どんな夢を見ているのかな。どうせ、とんでもない夢を見ているのだと言って笑う妻の声を思い出していた。