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バターピーナッツ

黄色く油ぎったピーナッツを探している。
しかし、何事も健康志向の世の中、時流に逆らうようなそんな商品は見つからない。昔懐かしいバタークラッカーに似た商品はあっても、これもまた記憶の中にあるような黄色く油ぎったものではない。昔のものも、当然ながら、バターなど使ってはいなかったのだろうが。

妻の父はバターピーナッツが好きだった。
晦日紅白歌合戦が終わると、除夜の鐘を聞ききながら、近くの神社へ初詣する。神殿前で御神酒を頂き、蜜柑を2個か3個貰って帰ると、年越し蕎麦を食べた。その後、義父は、もう少し飲みませんかと言って、水割りのウィスキーを作ってもらい、本棚にあるガラス容器からバターピーナッツを出した。
今も昔も、お腹が一杯になると、私はもう飲みたくない。それでも一杯ぐらいは一緒に飲んで話をした。どんなことを話したのか、何も覚えてはいないのだが、義父は上機嫌で、このあとは若い人たちでやってくださいと言って、寝室へ行った。
若い人たちというのは、私と妻と、妻の弟の三人だった。大晦日のあとの深夜放送を眺めながら、私は、それでも30~40分は起きていただろうか。
何もかも遠い昔のことなのに、義父の笑顔や話し声を思い出した。
義父は最期まで私に敬語を遣う人だった。