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2023-03-01から1ヶ月間の記事一覧

ねこのねごと

高田渡のアルバムに、そんなタイトルがあった。彼一流の自嘲のようで、言葉の響きも好ましかったのだが、その時は聴いてみようとは思わなかった。中学や高校の時に聴いていた歌い手から、少しばかり距離を置いて生きていた頃だった。 退職後に猫を飼い始めて…

オヤジさん -2-

◎昼寝前 喧しい酒飲みが嫌いなオヤジさんだったが、時々は商売人らしい人懐っこさも。 朝一番に、中央の魚市場へ行き、晩は8時9時近くまで開けていた店だから、途中昼寝が入る。その間は、娘さんか、娘さんが辞めた後は、古くからの連れだという大柄の男の…

海鼠

いつまでも寒い日が続く。雨も多い。それでも桜の開花は、いつになく早い。この冬は、海鼠を食べないまま過ぎていった。妙に値が張る上に、品物自体売り場で見ないと妻は言った。どうせ食べるのは私だけ。昔のように外で食べてくれば済む話だった。 海鼠とウ…

オヤジさん

◎本気で商売してる 飲み方は人それぞれ。どれが良くて、どれが良くないか_一概には言えない。自分にとって居心地の良い店。それぞれが、そんなところを探して飲むしかない。 その店のオヤジさんは、とにかく喧しい酒飲みが嫌いだった。高い位置にテレビを据…

紙パックのワイン

角打ちの出来る酒店で、急にワインを飲みたくなるときがある。日本酒や焼酎と同じか、もう少し大きな紙パック入り。いろんなものが入っている冷蔵庫の下段にあるのを知っていた。味の違いなど分からない。飲みたいと思う時に飲めば紙パック入りの白も赤も、…

中国菜

店に入って先ずコップ酒を飲んでいた頃。かれこれ20年近く前。元気だったし、飲まずにはいられないような気持ちで、毎日働いていた。 店に入って小さな黒板の品書きを見る。ズッキーニに目が留まり、注文してみた。大きな鍋から取り出し出して電子レンジで…

Five-storey pagoda and cherry blossoms

天気が良いのは今日だけで、暫くは、ぐずつくみたい。そう妻に言われて、急遽、外出することにした。20日ほど引籠っていた。人に会うのも、外出するのも、ただ億劫に思えた。しかし、出かけるなら、知人の個展を覗くため、京都へ。阪急ではなくJRを利用した…

飲み屋のインテリジェンス

一人で30~40分飲んでいると、知らなかったことを小耳に挟むときがある。 これは随分前の話になるのだが。母校の中学校が統廃合されることになった。夕方、立ち飲み屋で飲んでいると、隣で飲んでいた年配客二人が、その話をしていた。話し具合から、統合…

桜の季節

ちらほら桜が咲きかけている。満開になれば見応えがあるだろうと思いながら眺めていても、盛りの頃に来たいとは思わない。大勢の人の中に入り混じって花を愉しめる人間ではない。そもそも花を美しいと思うようになったのは、ここ20年くらいのことだ。花よ…

納豆

納豆を肴にしてコップ酒を飲んでいた。カウンターの前には私と後から来た客の二人だけ。怖い大将は昼寝中。綺麗だが頗る不愛想な娘さんが、店番をしていた。 もう一人の客も、納豆を注文した。発泡スチロールの容器から出して小鉢へ。ネギも辛子も要らないか…

齟齬

飲み屋で一人黙って飲んでいる人間は難しい。私も大概…なのだろうが。 その男はスキンヘッドに灰色がった緑の作業着。左腕は肘を曲げた状態で固定され、首から吊るされていた。障害があるのか、骨折の治療中だったのか。人を寄せ付けない雰囲気で一人酒を飲…

軽口

飲み屋で一人、黙って飲んでいるのが好きだ。周りの酔客たちの他愛ない話も、心に残る。軽口が言える人間であれば、異なる生き方が出来ただろう。そんなことを考える。 仕事帰りに立ち寄った角打ちの酒店。店主の姓名が屋号になっていた。常連の年配客は、穏…

議論お断わり

娘が生まれた頃、快速の停まる駅からすぐの、10階建て8階に住んでいた。時々帰りがけに立ち寄って酒を買う店があった。角打ちで賑わっていたが、大きな道を渡れば我が家、流石に、そこで飲んだりしなかった。店内に入ってすぐに目に入るのが「議論お断わ…

カナシイキモチデ

土曜日の午後 天気が良いのは今日まで。 そう聞くと、どこかへ出かけたくなる。 しかし、行くあてはない。 ふらっと立ち寄れる本屋も、角打ちの店もない。 職を辞してからは、土日祝日に街中へ出かけることもない。 悲しい気持ちで_の歌詞とメロディーが頭…