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2023-05-01から1ヶ月間の記事一覧

目刺

馴染みの角打ちが軒並み閉業になってしまって、ふと思い出すことが幾つか。今日は目刺。昔々、経済界のある有名人の食が質素だと話題になったことがある。一汁一菜が基本、目刺が好きだと喧伝された。成程なぁと思ったものだが、後になって、その目刺は、ど…

ネーミング

昼酒を供しておきながらヘルシーを謳うのも笑止ではあるが、その店のメニューには一頃ヘルシーおでんなるものがあった。注文すると、少し大きめの皿に、和布、ミニトマト、カイワレ大根、春菊を入れてくれる。注文が通ってから、具材を鍋へ入れるため、食べ…

フォー(続きの続き)

大阪のフォーの店が無くなってから暫くして、馴染みの下町にベトナム料理の店が出来た。ランチメニューに惹かれて入ってみた。注文したのは一番安い鶏肉のフォー。薬味として付いてた酢漬けのニンニクスライスが、とにかく美味かった。次に行った時には、鶏…

フォー(続き)

大阪のフォーの店には二度行った。一度目は私一人で。二度目は娘と一緒に。いずれも大阪場所見物の昼食として。その後、もう一度、行ってみたのだが、無くなっていた。ブリキの装飾品が至る所にあり、ベトナム風なのかどうなのかは分からないが、金星紅旗は…

フォー

職場に2年ほどベトナムの女性がいた。母国語の他に英語、フランス語が堪能。日本語も会話が普通に出来る上に、ある程度は読むことが出来た。書くことも、全て平仮名でなら、不自由はなかった。ずっと日本で暮らすつもりですか?日本語読み書きのテキストを…

味噌田楽

その飲み屋には、おでんはなく、代わりに味噌田楽があった。上司2人と同僚1人、部署は違うが皆がお世話になっている技術畑の高齢の人、全部で5人の私的な飲み会が催された。繫忙期になる前に、私を元気づけるという意味があったのではないか。あとになっ…

土曜日の下校時間

給食のない土曜日の下校時間。小学校の正門のところに、時々、妙な物売りが来た。自分でも作れそうな輪ゴムの鉄砲やスギノミ、ジャノヒゲの種子を飛ばす篠竹鉄砲、夜光塗料が塗られた髑髏の玩具など……。担任の先生からは、買わないようにという指示は出てい…

玉ひも

職場の先輩に声を掛けられた。玉ひも好きか?訝し気に頷くと、玉ひもを塩焼きしてくれる店がある。肝も塩焼きがある。とのこと。一緒に飲みに行くことのない人だったが、有難い情報を教えてもらった。店は職場から近い。すぐに分かった。玉ひもも肝も、塩焼…

真夏日

5月半ばにして真夏日の告知。日向へ出ると、成程と思うのだが、日陰は涼しい。湿度が低いからなのだろう。これが真夏日であるなら、7月、8月は何なのだろうか。この過ごしやすい「真夏」なら、玄関先に縁台を置いて風に吹かれるのも悪くない。 もう潰して…

そらまめ

その店のそらまめは、塩茹でではなく、薄味の出汁煮だった。小鉢に出汁と一緒に入れてくれた。割り箸を使わなければならないのが面倒だという人もいた。が、お蔭で、皮まで食べられるのを知った。皮まで食べられるのか_と大将に訊く人もいた。うちのお客さ…

枝豆

あとから入ってきた客人。とりあえず、生と枝豆。と注文した。女将は、ごめんね。枝豆、まだ粗熱がとれてないんよ。と謝った。熱々でないんやったら、構へんで。やり取りを聞いていた私は二品目を枝豆にした。茹で立てでないのが、寧ろ残念なぐらいだった。…

魚肉ソーセージ

年末には、別の会社の魚肉ソーセージを売った。売り場は自宅から歩いていけるスーパー。今は見る影もないほど廃れてしまったが、その時は歳末商戦の只中でもあり、人で溢れていた。売り場責任者のところへ行って挨拶すると、ソーセージの並んだ特別ワゴンの…

ハムを売る

地元大手企業のハムを売るアルバイトをした。大学3年の夏前だった。営業所へ行くと、スライス・ハムの売り出しだということで、いくつかの場所へ分かれて行ってもらうとのこと。学生それぞれ、何台かの車に割り当てられ、私の一日目の行き先は、古い市場の…

ボンレスハム

年始に行く伯母の家の重箱にはハムが入っていた。初めて口にした時は、それがハムだとは分からなかった。分厚く切られた塩味の肉。これは何?と訊いた。ハムだけど、嫌い?と伯母は言った。これがハム?今まで食べていたものは何だったのか。小学校の低学年…

スライス・ハム

いくつかハムの話を…… 燗酒と湯豆腐のセットで飲み始め、次のアテをどうするか、壁面の品書きに目をやって、左右に何度か視線を走らせていた。店のカウンター席は、通路を挟んで2面。調理場に向いた側と、鏡に向かいあうような壁面と。その日は壁面側、品書…

うまいか

その立ち飲み酒房には、カウンターに並ぶ琺瑯バットの一つに「うまいか」が盛られていた。しかし、最初の注文にそれを頼むと、怖いオヤジさんの不興を買うことになる。これは、おやつ。先ずはおかずを。というのが、オヤジさんの思いだった。店の一番の売り…

夏を想う

角打ちの店や立ち飲み酒房のメニューには、夏前ぐらい前から、心太が現れる。冷奴や枝豆と同じような扱いか。しかし、肴になるとは、思ってもみなかった。酢醤油と練り辛子に合わせるから、食べてみたら、日本酒に合う。それを知ったのは、20代の終わり頃…

菜の花

外で飲む機会が減ったからか、菜の花を暫く食べていない。妻に話すと、食材として棚に並んでいるものは、結構な値がついているらしい。そんなものを買っても、おかずのメインにはならない。食べたければ、外で飲む時に_と言われる。しかし、飲みに行かない…

コロッケ

小さな飲み屋の女将さんが、コロッケを作っていた。少し遅い昼食になったので、2時を過ぎており、客は私だけ。巻き身を炒めたものを肴にして湯割りのウィスキーを飲んでいた。コロッケ、わざわざ手作りされるのですね。そう呟くと、常連さんからのリクエス…

五月の光

午後6時を過ぎても散歩道は明るい。傾いた陽射しを受けた木々の緑と影に見惚れて、屡々、足が止まる。遥か頭上、鉄塔の送電線が風を受けて鳴っていた。甍(いらか)の波と 雲の波定型の歌詞が口を衝いて出た。鯉幟を揚げた父の顔、叔父の顔を思い出す。父は30…

ほろ苦いもの

妻が作る天婦羅は軽くて美味い。結婚した当初や、娘が未だ小さかった頃は、私が海老の天婦羅を揚げて、どちらの両親にも振舞った。しかし、いつぐらいからか、自分で揚げてみることはなくなった。お惣菜の天婦羅も、家のものとは違う美味しさはあるが、二つ…

天婦羅盛り合わせ

昼から開いている飲み屋には、昼だけの定食メニューがある。良心的な値段で、それなりに満足できるから、お得と言えばお得なのだが。私は、いつ頃からか、おかずだけ注文するようになった。初めの頃は、御飯を軽く_と云って注文していたのだが、おかずだけ…

マイナー

連休の狭間の平日。或る催しに惹かれて観光地へ出かけた。4時過ぎに起床。家を出たのは7時まで未だ少しある6時台。それでも目的地到着は9時になった。人影の疎らな朝は清々しい。見たいと思った催しを見て回った時間は90分ほど。期待した以上に得るも…

serendipity

角打ちの店で、常連客から「先生」と慕われる御仁との会話。どんな話の流れからか、「先生」が serendipity という語をご存知ですか_と尋ねた。首を傾げると、今日みたいな、あなたとの会話が serendipity に当るのではないかと思いましたとのこと。「偶察…

悲しい報せ

新聞、テレビを見なくなって久しい。ニュース・サイトでラインナップを眺める程度。そのたびに思うのだが、悲しい報せばかりだ。楽しいものや、この先に何らかの夢を抱けるものが、どれだけあるだろう。そう思うのは多分もう歳だから。残り時間は僅かだと感…

脆弱な心

この日、久しぶりの晴れの日。甲南の山に西日が当たるのを見たくなった。しかし、そう思いついてから、幾日も日が経っていて、大学の新年度が始まっていた。昔、妻と新しい家を探していた頃、そこが私たちには手の届かない地域であることを承知しながら、ぶ…

戦争は知らない

カラオケのある2次会へは行かない。それでも退職まで4年を残す秋、間違って、ついていったことがある。いろんな人が、いろんな歌を歌うのを聞き流していた。こんな人が、こんな歌を歌うのかと思うこともあったが、大半は知らない歌。何か一曲_と歌本を渡…