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天婦羅盛り合わせ

昼から開いている飲み屋には、昼だけの定食メニューがある。
良心的な値段で、それなりに満足できるから、お得と言えばお得なのだが。
私は、いつ頃からか、おかずだけ注文するようになった。初めの頃は、御飯を軽く_と云って注文していたのだが、おかずだけ注文できるのを知ると、どこの店でも尋ねてみるようになった。そんなに安くならないですよ_と念を押される店もあるのだが、フライ定食の鯵フライだけを出してもらえるのが嬉しい。揚げたての豚カツが一枚、たっぷりの千切りキャベツの上にあるのを見ると、心が浮き立つ。氷無しの水割りウィスキーか常温の日本酒が横にあるのは言うまでもない。

天婦羅の盛り合わせを食べながら、昔の同僚を思い出した。
職場の旅行で、或る温泉旅館に泊まった際、宴会料理の天婦羅に、海老が含まれていなかった。茸と山菜の野菜天婦羅なのだが、幹事長が勝手にコンパニオンを頼んだから、料理が安っぽくなったのだと云う。
私は、野菜天で十分満足だったが、彼は海老天の無い盛り合わせは有り得ないと力説した。コンパニオンの御姐さんのお酌は黙って受けてはいたが、幹事長の方を憎々しげに睨んでいた。
幹事長は、その次の年に退職。
最後に好き放題の旅行計画を立てたのかもしれない。と私も思ったのは確かだ。が、海老天がどうしても必要かと自問すれば、そうではないなというのが私の思い。コンパニオンが同席した宴会は空前絶後のことだったが、華やかな雰囲気は悪くはなかった。参加した男性、女性のいずれからも、批判と肯定の声は半ばしていたように記憶する。