kanashiikimochide

sakeganomitaitoki

幹事さん

就職した初年度、職場の親睦会の幹事になった。もちろん一人ではなく、何人かの人たちと一緒に。謂わば幹事の下働きのような役割だった。
職場から然程遠くない一棟貸しの施設で宴会のときには、持ち込みのビールケースを運んだ。細々とした雑用をしたはずだが、具体的なことは、もう皆忘れてしまった。
それでも、こんな助言があったことは、忘れていない。
宴会が始まって、ビール瓶と徳利を持って、お酌しに回っていた。
酒の強い先輩に、止めておけと制止される。
お前みたいに、飲める奴は、すみっこでじっと飲んでいたらいい。酌をして回っているのは、皆、飲めない奴だ。飲めても、僅かしか飲めないから、人に注いで回って休憩している。その役割を、飲める奴が、盗ってはいけない。と。
訝しい気持ちで、幹事の末席に戻った。
私が酌をして回らなくても、誰からもお咎めは受けなかった。
酒に弱い上司が回ってきて、酌をしてくれた。ビールではなく、日本酒を飲んでいると分かると、猪口ではなく、コップで飲めと言う。これも先輩の教えどおり、最後まで、猪口で受けた。飲めない奴に限って、酒のペースを知らないから無茶を言うのだそうだ。
酒は美味しいと思うが、コップで飲むほど強くはない_そう言って、断りつづけた。

私が飲み会の幹事をしたのは、この初年度だけ。
辛気臭い、陰気な人間に場を盛り上げる才覚はない。
飲み会の嫌いな酒飲みという評価が、30代半ばから定着したせいもあるのだろう。
出席するのが嫌で、始まる前に練習と称して飲んできたり、二次会がカラオケだと分かると、一次会の途中でドロンしたことも……。