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猫と娘

串カツ屋で飲んでいて、娘に背中をつつかれたことがある。
お父さんに似た人がいると思ったら、本当にお父さんだった。そう言って笑われた。
娘は学校帰り。もう酒が飲める年齢になっていた。
何でも注文していいよ。そう言うと、生ビールを頼み、串を幾つか。
私もコップ酒を追加した。
特に何か話したわけではない。軽く飲んで、一緒に家へ帰った。
お父さんが飲んでいるところに通りかかって、一緒に飲んだ。と妻に報告している。
あら。珍しい。良かったね。という遣り取りを聞いた。

娘は、それから暫くして、探さないでという書置きを残し、失踪した。
いろんなところを尋ね、娘の小学校からの友人の情報により、東京で一人暮らしを始めていることが分かった。
家に戻ってくるように何とか説得することはできたが、大学は辞めたいとのこと。休学することも勧めたが、続けられないと言う。2年の途中から、講義に殆ど出ていなかったことは、失踪中に訪ねた大学事務室にて知らされた。

私と一緒に串カツ屋で飲んだ時、学校帰りだと思ったのだが。
一日どこで娘は過ごしていたのか。
大学中退を認めたのは、何度か自死を考えながら過ごした時間があったことを告げられたからだ。
生き辛さを抱えている娘だとは、気づいていた。
しかし自分の憂さにかまけて、娘に対して、何の力にもなっていなかった。

家を出て、猫と暮らす娘は、今はもう40が目前だ。