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レーズンバター

レーズンバターを無性に食べたくなるときがある。
時々立ち寄る店のメニューにあるから、そこへ行けばよいのだが。
頭の中に、学生の時に通った店が甦る。
店名は、何故かスコットランドの大都市。スコッチウイスキーがメインだったのだろうか?私は専ら角だったが、その頃、HAIGが流行っていた。
その店のレーズンバターは、シャンパン・グラスのような高脚のグラスに入って出てきた。今とは違い四角いレーズンバター。何切れか、砕いた氷のマウンドに載せられていた。普段それほどバター好きではないし、干し葡萄が好きなわけでもない。それが、一切れ食べてみて、こんなに美味いものはないと心から思った。出てきたものを一人で全部食べてしまいたかったが、テーブルを囲んでいた全員に一切れ当たるかどうか。当らなかった者もいたはずだ。
粋がって飲んでいたオンザロックに相応しい味だった。
ヤングコーンも、その店で初めて口にしたのだが、ウィスキーに似合う甘さだと思った。
そんなに甘いものが欲しいのなら、チョコレートを頼めばよいのでは_と揶揄された。菓子店で買えるものを、わざわざ飲み屋の高い金を払う気持ちにはなれなかった。
所持金はゼロに等しく、何を楽しみにしていたのか思い出せないのに、その頃が懐かしい。
レーズンバターを食べてみたくなるのは、ただ懐旧の思いに囚われているから_なのか。
店はとっくにないし、一緒に飲んでいた仲間も、鬼籍に入るような歳だというのに。