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sakeganomitaitoki

久しぶりの外出だったが、却って、気持ちが沈んだ。
このままイヤな気持ちを持ち帰りたくない。
体調は良いとは言えなかったが、軽く飲むことにした。
氷無しの水割りウィスキーを頼み、品書きを見た。
クジラ刺身とある。レーズンバターを頼むつもりだったが、気持ちが変わる。私の注文が通って、クジラ、終わりね。という声が店内を廻った。
薄い赤身肉が5~6切れ。薬味はおろしニンニクにした。濃厚な溜まり醤油につけて口に含むと独特の獣臭い味が広がる。美味いと言えば美味いし、懐かしい。


小学校の授業参観で、ベーコンは何の肉でしょう?と担任の先生が質問した。皆が元気良くハイの声と共に手を上げ、私が指名された。
鯨!大きな声で答えると、後ろに並んだ母親たちから、どっと笑い声。
担任の先生は、鯨も、ありますが他には?と尋ねた。
私は答えることができず、他の子が豚!と言った。
帰宅後、母親から小言を言われた。
鯨よりも豚のベーコンを普通に食べている。目玉焼きと一緒に食べているのは豚のベーコンよ!
鯨は笑われるようなものだった。
それなのに、同じ小学校の社会の授業では、捕鯨オリンピックでの日本の成績が誇らしげに語られていた。

 

何もかも。いろんなことは遠い昔だ。
僅かな肉片を水割りウィスキー2杯で片づける頃には、沈んだ気持ちは消えていた。