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冷えていないビール

ビールを飲み屋で頼むことは滅多にない。歩き疲れた夏の日の生ビールが美味いのは分かっているが。
飲まないのは、どの店も、冷え過ぎていて、中瓶ですら持て余す。冷房が効いている店内なら尚更のことだ。

頼めば、冷えていない瓶ビールを出してくれる店もある。しかし、そのための説明が面倒くさいし、周りから注がれる奇異な眼差しも、覚悟の上とは言え、辛い。ジョッキまで冷凍庫に入れて飲んでいた昔は、ただ若気の至りだった。

常温のビールをコップに入れると泡ばかりになるのだが、口に含めば、ホップの苦みと共にパンのような香味が広がる。
幼馴染の友人は大学卒業後、ヨーロッパとアフリカ北海岸のあちらこちらを放浪してきたのだが、こんな土産話をしてくれた。
ドイツの田舎町で飲んだビールは生温かった。しかし、それがまた不思議に美味いんだ。

友人のように遠く旅することはない。それでも時々、常温の缶ビールを飲んでみるのは、夏のささやかな愉しみだ。その時は、発泡酒でも第3のビールでもなく、昔ながらのビールにする。むろん、発泡酒第3のビールでも冷やしたりはしない。