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目刺

馴染みの角打ちが軒並み閉業になってしまって、ふと思い出すことが幾つか。
今日は目刺。
昔々、経済界のある有名人の食が質素だと話題になったことがある。一汁一菜が基本、目刺が好きだと喧伝された。成程なぁと思ったものだが、後になって、その目刺は、どこそこの立派な目刺だという鼻白む言も耳にした。…
以来、人の好き好き、好みのあれこれは、話半分、或いは聞き流す程度にした。それよりも、自分の好きなものは、誰がどうであれ、ただ好きだと考えるようになった。
目刺は子供の頃から好きだった。あの苦いようなワタの部分でさえ。
肉の方が好きだと言っているけど、ホンマは魚が好きなんと違うか?
父や母から指摘されたのを思い出す。
確かに。妹は目刺が嫌いだった。
角打ちの品書きにある目刺は、3~5尾と但し書きがあった。小さいものばかりの時は5尾ということらしいが、注文して5尾出てきた時は無い。しかし、その3尾は、思っているよりも遥かに小さく、カリカリに乾いていた。5尾供される時の目刺の大きさは、どれぐらいなのか。想像するのも一つの愉しみだった。
小さな目刺は、それなりに苦く、歯ごたえがあり、場違いで何の繋がりもないのに、ごまめの歯ぎしりという語を思い浮かべた。
小さな目刺の3尾では、コップ一杯の酒は片付かず、今度は茹で卵か何かを追加するのが常だった。