kanashiikimochide

sakeganomitaitoki

ネーミング

昼酒を供しておきながらヘルシーを謳うのも笑止ではあるが、その店のメニューには一頃ヘルシーおでんなるものがあった。
注文すると、少し大きめの皿に、和布、ミニトマトカイワレ大根、春菊を入れてくれる。注文が通ってから、具材を鍋へ入れるため、食べごろになったものから順次皿への追加となる。春菊に代わってレタスのときもあり、それも美味かった。
殆ど野菜ばかりのヘルシーおでんは、何故か安くはなかった。それが災いしたのか、メニューからすぐに消えた。
以来、家でおでんをするときには、春菊や和布を希望した。何もないときには、せめてもという思いから、次の日の朝食用ミニトマトを入れてもらった。
私の贔屓は、すぐに消えてしまう。ヘルシーおでんも、その一例に過ぎないのだが、何故無くなってしまったのか、時々思い返して考える。おでんを食べたいと思うとき、大方は和布や春菊なんぞ食べたいとは考えない_ということなのだろうか。それに、やはり名前が良くなかった。
気恥ずかしいネーミングついでに、その店の昼定食には、女子サッカーに因んだような名前があった。あっさりした煮物がメインの、女性客目当ての商品。むろん男性客が注文することも可能だった。口にしたくない名称ながら、何度か注文するほど、私はこれも贔屓にしていた。しかし、このメニューも短命だった。
見ていると、若い女性客は、あっさりしたものなど眼中にはない。日替わりのサービス定食が、唐揚げであると知ると殆ど誰もが、それを注文していた。私は唐揚げ定食を頼むほど健啖ではない。
女性客目当ての恥ずかしい名称を口にしながら、これが煮物定食等、普通の名前なら_と何度思ったことか。
スポーツの中継で連呼され、ニュースの見出しに用いられる名称くらい恥ずかしいものはない_そう考えるのは私の勝手ではあるのだが。