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serendipity

角打ちの店で、常連客から「先生」と慕われる御仁との会話。
どんな話の流れからか、「先生」が serendipity という語をご存知ですか_と尋ねた。
首を傾げると、今日みたいな、あなたとの会話が serendipity に当るのではないかと思いましたとのこと。
「偶察力」という訳語もあるようですが、こちらの方が分かりやすいかもしれませんと言って_小さな紙片に the fact of finding interesting or valuable things by chance という言葉を書いてくれた。
あなたの好きなゴシック小説の始祖による造語。
serendip は現在のスリランカ、私にはセイロン島という名称の方が馴染み深いですが。

先生に言わせると、面白いものとの偶然の出会いは、幸せなことなのだが、その偶然を生み出すのは、聡明さだけではなく、その人の心が健全であることも大きい。
つまり、つまらないことにくよくよせず、おもしろいものを探していきましょう。
そう言って、にこやかな笑みを見せた。

飲み屋で話しかけてきたのは「先生」の方からだった。
私はいつものように一人で、ゆっくり飲んでいた。
何を考えていらっしゃいますか?
そんな声掛けからだったか。
読んでいる本のことを考えています。そう応えると、
本をお持ちですか?と尋ねる。リュックのポケットから出して見せた。
The Intercom Conspiracy
Conspiracy は conspire の名詞形?そう言われたので頷いた。
一般的な物語の体裁ではなく、手紙や記録、メモなどが生の形で出てくることを告げると、佐藤春夫が翻訳した「ぽるとがるぶみ」を知っていますか、と尋ねる。読んでいないと告げると、今度、お貸ししましょうと言われた。

知らなければ恥ずかしい
そんな宣伝文句が目につく。難読地名、難読熟語、書き順…。
知らないことを恥ずかしいと思うかどうかは、人それぞれ。思うとしても、自ら感じるものであり、人からせせら笑われる筋合いのものではない。

しかし、イヤごとを言う人が主役のように振る舞うのが今の流行りのようだ。