kanashiikimochide

sakeganomitaitoki

ラ・フランス

月曜日に四個のラ・フランスが届いた。
入院する前に、妻が注文していた。かつては、泥付き・虫食い穴だらけの無農薬野菜等を共同購入し、グループで分けるというシステムだった。しかし、そんな高尚な主義主張では、長続きしない。今は、生鮮食品と生活雑貨のカタログ注文・個別配達_という業態に変わっている。
ラ・フランスは例年一度か二度注文していた。色も形も、味も匂いも、私が好きだからだ。

食べごろを見極めるのが難しい。妻は少しばかり固いものを切り分け、まだ早かったと何度か言ったものだ。今年は私が説明書きを読みながら、食べごろを見極めることになった。
木曜日の夜、汁を流しているものがあるのに気付いた。梱包の具合で、隣のものの軸が当たったような跡があった。包丁を当ててみると、その小さな圧迫痕を中心にして、熟しきった無花果のような柔らかさだった。そのまましゃぶりつくと、頗る美味い。それ以外の部分は、ウサギりんごよりも薄く切り分け、皮を剥いた。

妻に美味であったことをLINEで告げると、食べたいな!と返ってきた。
果物は出ているから、少しぐらいなら食べても構わないのでは?とのこと。
明日、一個、持っていきましょうか?と送ると、一個は無理だと云う。
私が、いい加減に剥いたものでも構わなければ_と返事すると、
少しだけ。というリクエスト。

私の剥き方は、或る若い家庭科の先生の教えに従ったものだ。
リンゴは、丸のまま剥いたりしないでいい。
ウサギりんごくらいに切って、それから皮を剥けば簡単!それに幼稚園のときにはウサギりんごの耳、みんな食べていたでしょ。皮ぐらい食べていい。
それに対して、茶々を入れる馬鹿な男もいた。
先生!皮を最後まで千切らずに剥くことが出来ないんちゃうん?俺は向けるで。
そんなもんは自己満足に過ぎません。先生は、男の子の誰でもが包丁持ってリンゴくらい剥ける人になってもらいたい。丸のまま剥かなければならないなんて決まりはない。そんなふうに難しく考える必要もない。
との教えだった。

なるほどなぁ。と思うしかなかった。

一個のラ・フランスを四つに切り、それをさらに三つに分ける。一個を十二に分けたことになるのだが、等分ではない。薄っぺらいものもあれば、少しばかり分厚くなったものも。芯の部分も取り切れていないが、どうせ自分が食べるものだ。そんなものを四切れ妻に届けた。
面会は制限されているので、届け物と一緒に紙袋に入れ、看護師さんに託した。

後から、ラ・フランス、美味しかった。とのLINEが返ってきた。ただ嬉しかった。