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枝豆

あとから入ってきた客人。
とりあえず、生と枝豆。と注文した。
女将は、ごめんね。枝豆、まだ粗熱がとれてないんよ。と謝った。
熱々でないんやったら、構へんで。
やり取りを聞いていた私は二品目を枝豆にした。茹で立てでないのが、寧ろ残念なぐらいだった。
枝豆を冷蔵庫で冷やすのが、飲み屋のサービスだったとは知らなかった。


枝豆を枝付きで茹でてくれる店があった。
むろん、茹で立ての熱々。小さく切り離した枝を持って、適当な頃合いを見計らって口に運ぶ。
その野趣あふれた雰囲気だけではなく、茹で立ての美味しさが格別だった。
しかし、そう思ったのは少数派だったようだ。すぐに枝付きではなくなり、店もなくなった。


枝豆(ギフ産)と黒板に手書きしている店があった。
怖いもの知らずの客人が、大将に、岐阜は枝豆の有名な産地なのかと尋ねるのを聞いた。
知らん。こう書いておけば、冷凍モンとちゃう_と分かるやろ。市場で買っているのは、ほんまに岐阜産やし。
店で茹でて、カウンター上のバットに常温放置。冷蔵庫で冷やしてはいなかった。
その(ギフ産)の断りが、いつの間にか取れていた。私は心密かに、冷凍モンに変わったのかと思ったが、何も言わなかった。


勤めに出ていたころ妻が毎日弁当を作ってくれた。夏になると、おかずの中に枝豆が入った。保冷剤代わりに、冷凍の枝豆を入れてくれていたのだ。昼、弁当を使うころには食べごろになっていて、嬉しかった。