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素麺

10年程前まで足繁く通っていた角打ちの店。
夏になると素麺が品書きに現れた。
冷蔵庫の密閉容器の中に、茹でた素麺が一人前ずつ小さな塊で並んでいた。注文が通ると、硝子器に一塊の素麺とツユ、薬味のネギが入り、客のもとへ。
食べているのは皆かなり年輩の客人。日本酒のアテとして。或いは瓶ビールのアテという人もいた。
残念ながら、その味を知ることがないまま、店は皆、流行り病の期間中に潰れてしまった。
夏の昼下がり、立ち飲みしながら素麺を啜っていた客人は、今はどうしているのか。

夫婦二人の昼食では、素麵三把を食べきれない。
ノベルティの小さなぐい吞み一杯の冷酒が御伴だが、素麺を食べきれないように、酒もそれ以上欲しいと思わなくなってしまった。

何年か前、盆休みに帰ってきた娘が言った。
美味しくない素麺があるのにびっくりした。
安いものだったから、仕方ないのだけれど、素麺でも美味しい不味いがあるのを知った。とのこと。
我が家はスーパーに並ぶ地元メーカのもの。ごく普通の品だ。
味の違いは多分私には分からない。