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松茸

勤めを辞める前、休日出勤の帰りがけに、松茸を買うことがあった。
無論、産地不明の安物。
青物商の主人も、
天婦羅にしたらイケるよ。という売り方。
安物と書いたが、安くはない。家計を考えるなら、腹の足しにならない贅沢品。莫迦げた出費だ。
それを紙袋に入れてもらって、帰宅前に寄道。
自立支援型老人マンションに一人暮らす母の所へ行った。
半分どうぞ。と言うと、二本ほど選んだ。
天婦羅にするのがおススメ。
受け売りを伝えると
そんな勿体無いことはしない。ガスがないから、オーブントースターで焼く。それを裂いて、御飯に混ぜ、おじやにする。
とのこと。
焼き松茸の雑炊を想い描きながら帰宅した。
家に持ち帰った分は、ホイル焼きにしてもらった。
ぐい吞み2杯ももたないアテ。妻は一切れだけ食べた。

どこかの温泉旅館の、秋限定の献立写真。土瓶蒸しの写真と陶板焼きの牛肉に目が止まる。脂の美しい牛肉三切れ。それだけで、もう十分だと思えた。
ほんの僅かのアテと冷酒を数杯。
それ以外は要らないと言ったら、呆れた顔をされるのだろうか。
本当にそれだけでも、請求は、大した額になるのに違いない。


もう松茸を食べることはないだろう。