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田舎暮らし

同い年の理髪師さんから教えてもらったこと。
都会での人付き合いが厭で田舎暮らしを始める人、大体は上手くいかない。
50過ぎでも青年団
消防団参加。
祭りの手伝いは必須。
成程なぁ。と思う。昔、有名なフォーク・シンガーも、そんなことを歌っていた。
人付き合いが厭なら、ひっそり暮らすなら、むしろ大都市。
しかし、口下手で、人付き合いが苦手な者でも生きていける仕事が、街中にあるだろうか。
炭焼きや樵、或いは、木地師のような職人なら、人里離れて暮らすことが出来たのではないか。

小学校の途中まで通っていた歯科医院の近くには、欄間職人の家があった。
木屑にまみれて彫刻刀を動かす年老いた職人の姿に憧れた。
中学校を卒業したら弟子入りしたいと考え、母親にそう言ったことがある。
一笑に付された。
欄間のある家なんか、もうどこにも無い。必要ないものを、誰が買うか。あんたが大人になる頃には、そんな職人は、もう存在しない。と断言された。
確かに、その欄間職人の家は、もう無い。いつ無くなったのか、それすら覚えていない。

誰とも喋らず、一日木屑にまみれながら、生きていくことのできた社会。
皆が皆、人付き合いを上手にこなし、祭に馳せ参じなければならないとしたら、私はやはり人として生まれるべきではなかった。と考えてしまう。


自分が楽しいことは、他の誰もが楽しい筈だと考えるのは、一種の傲慢だろう。祭に参加できる者もあれば、できない者もいる。
正常異常で括られる謂れはない。