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季節外れ

肌寒くなったのに、夏の匂いという語を思い浮かべている。
‥‥何度でも夏の匂いを嗅ごう‥‥
夕暮れの道を歩きながら古い歌を聞いていたからか。
体を動かしていた頃なら、夏は汗の匂いだが。
今は何なのか。具体的な匂いは浮かばないのに、爽やかな芳しい匂いを夢想する。
多分、私は、いつだって季節外れだ。

おでんが売りの店で、筍を頼んだ。
三切れ串刺しになった具材なのだが、今は筍の季節ではないとお姐さんに諭された。
事実はそうなのだが、この店が、そんな旬を売るようなところだったかな_と考えた。
業務用の大きな缶詰か、冷凍食品。そんな記憶は私の勝手な妄想だったのか。
確かに。今は筍のシーズンではないですね。
そう頷きはしたのだが。
茶色に煮しめられた三切れ串刺しの筍をアテにして熱燗を飲んだ記憶がある。
周りには、職場の同僚が何人もいて、それなりの飲み会の席だった。
みんな生きているはずだが、もう30年近く見ていない顔ばかりだ。多分、もう会うこともないのだろう。

筍のことを考えていたら、ぜんまいの水煮を食べたくなった。
食品スーパーにあるのは外国産ばかり。
かと言って、国産と銘打たれているネット商品も、本当はどうなのか。
豆腐屋に笊に盛られていた昔が懐かしい。
厚揚げと一緒に煮つけられたぜんまいの味。今は、うすぼんやりとした思い出でしかない。