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コーヒークーポン

 

駅前にある二つのスーパーマーケット。そのどちらかで、ほぼ隔日に買い物をしている。
立ち寄る場所のない私には、それが気晴らしになっている。
売っている食材に違いがあり、ドリップ用のコーヒーは、片方にはあって片方にはない。
妻がまだ入院していたころから同じ袋入を買い続けているのだが、側面に印刷されたコーヒークーポンから懐旧の思いに耽った。

結婚した当初、コーヒークーポンは台紙を剥がせば貼付できるシールだった。
妻は、景品のコーヒーメーカーを貰うことを夢見て、指定の台紙にクーポンを貼り付けていた。
枠一杯にクーポンの貼られた台紙が何枚溜まっただろうか。
それでもコーヒーメーカーと交換してもらうには、まだまだ足りなかった。
その内に、シールではなくなり、印刷されたものを切り取る現行の形式に変わった。切り取られたクーポンは丸まって捩れ、風に飛ばされた。台紙に貼り付けるのも難儀する。小中学校で集めていたベルマークの煩わしさに似ていた。

いつまでクーポンを集めていたか、もう覚えていない。夢見ていたコーヒーメーカーは、結局、ボーナスか何かで購入した。
コーヒーメーカーにはミルも付いていたから、粉ではなく豆を買ってきた。もっぱらブレンドだったが、時折、私が好きだったモカの時も。……
しかし、2台目まで購入したのだが、その後またペーパーフィルターに戻った。
あんまり美味しくないから。と妻は言ったが、私には味の違いが分からなかった。

袋に印刷されたコーヒークーポンを眺めて、忘れていた(そして今は無い)赤いコーヒーメーカーを思い出した。
若い妻の顔も。