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ちぐはぐ

妻が亡くなって2か月が過ぎた。
月命日の日、私が食べたのは、昼も夕方も、5日ほど前から続いている味噌味の鍋だった。
最初は、もつ鍋。次の日には豚肉と白菜。それから豚肉と大根、竹輪等の練り物、揚げ、豆腐…、少しずつ具材を変えながら。
食べながら、食卓に置いた小鉢に、口を持って行って食べていることに気づいた。
目の前に妻がいたら、多分、窘められただろう。そう思ってからすぐに、私は、もうずっとこんな食べ方をしていたのではないか_と考えた。


自分の悪い癖は、誰かに指摘してもらわなければ気づくことはない。それのどこが悪いのか、いつの間にか分からなくなっているからだ。
「『なんで?』と言うのは、良くない口癖だと思う。」
妻に、そんなことを言われたのを思い出す。
「答えを求めているのではなく、ただの詰問。とても感じが悪い」
確かに。
猫砂をまき散らした猫にも、私は「なんで?」と言っていた。
まき散らさずに、きれいにトイレをする時もあるのに、この散らかし方は「なんで?」と言いたいのだが。
なんで?と尋ねても、猫が答えるはずはなく、確かに、端から答えを求めてはいない。ただの詰問だった。

 

感じの悪い口癖は治らないまま、妻にありがとうの一言も言えなかった。妻がもっと生きていたら、私はその内、別居婚を言い渡されていたのかもしれない。

食後の洗い物をして、夕食のときの箸が間違っていたのに気づいた。一本は私の箸だが、片方は妻が使っていたもの。赤くて、私のものよりも短いのに、洗い物が終わるまで気づかなかった。

何を考えていたのか。何も考えていなかったのか。
うわの空で私は生きている。