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娘が猫を飼い始めて今年で12~3年。
雨の日の帰りがけ、道端で鳴いている子猫を拾ってきた。
少し大きくなって、去勢の処置が済むぐらいまで、預かってもらえないかと言う。
当時、私たち夫婦二人で住んでいた集合住宅は、ペットの飼育は禁じられていた。しかし、子猫の状態では娘一人で暮らす部屋にも残せない。妻が預かることを承知した。
小さな子猫だから、部屋から出さないように注意すれば、近所にも気づかれない。それが妻の理屈だった。

雉トラの子猫は私に懐いた。
仕事から帰ってきて晩酌する膝に上ってくる。爪をしまうことを覚える前だから、デニムの膝に爪が食い込んで痛かった。
食べ終わると、ほどなくして布団へ入る。翌朝は遅くても4時起きで、持ち帰りの仕事を片付け、6時前には家を出なければならない。その布団の中へ、子猫も入ってきた。可愛くて仕方ないのだが、寝ている間に押し潰してしまわないか気が気ではなかった。
小さかった猫は、どんどん大きくなって、去勢手術も終え、娘のもとへ、いつ帰るかという頃。
職場でトラブルが発生して、帰るのが遅くなった。夕食も食べないままだったが、妻には先に食べておくようにというメールを送った。返信のメールには、玄関ドア近くの棚に座って私を待っているらしい猫の画像が付いてきた。
今、その画像を探してみるのだが、見つからない。
妻に訊いてみたが、スマートフォンを使用する前のガラケーだから、もう探しようがないとのことだった。私も、携帯電話を持っておらず、今はない私物のタブレット端末からだった。

娘の家に帰った猫は、私のことは、もう忘れてしまったようだ。
雉とらだった子猫は、洋猫の血が入っていたようで、長毛の大きな猫になり、ほとんど黒猫にしか見えない。偶に出会うと、恐る恐る挨拶をしてくれるが、唸り声をあげることも。
どの猫も可愛いのだが、それぞれに難しい。