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発熱病臥

たいした熱ではない。
しかし平熱が低いと微熱でも節々が痛い。38℃越えともなれば、この世の終わりだ。
家庭内隔離を言い渡され、猫は構いませんかと尋ねた。猫には、うつらないですが、その猫が他の家族に擦り寄ったりするのは、どうなんでしょう。分かりません。とのこと。
私と妻しかいない家の中で、猫は好き勝手に歩き、寝ている。誰の言うことも聞かないのが猫だ。
いつもとは違う場所に蒲団を敷いて寝ていると、覗きに来た。
どうしてこんなところで寝ているのか。そう言いたげな顔をしていたので、病気だから、近寄ってはいけません。と教えてやる。
猫は、多分、人語を理解するのだろう。側には寄ってはこないで、離れた場所に蹲った。そして、その場所で寝言を言い始めた。
たいした熱ではないのに、あちらこちらが痛み、寝ているだけで腰痛が、ぶり返す。
天窓があるため、日中は明るい北側の小部屋。
日が暮れた頃、天窓の向こうの空の色が一際美しくなった。
アイスクリームを浮かべたソーダ水だと思った。
明るい青を背景にして、淡い茜色した雲が、ゆっくりと動いていた。
翌日、ネットニュースの見出しに、「夕空に竜が出現?」とあった。
雲を大きな鳥の翼のようだと思うことはあっても、鯨や龍に似ていると思うことはない。
見たこともないものに似ていると思うのは、一種の信仰であり、赤の他人には好き勝手に触れてもらいたくない部分だろう。
誰かが竜に似ていると思ったにせよ、多くの人の目に触れる場所では使うべきではない。
熱で濁った頭での愚考ではある。