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独り飲む場所

引きこもりの独居老人……
それでも、自炊の食材を求めて、家を出る。
好きだった夕暮れの散歩は、多分もう出来ないだろう。
昼前か昼食後、近くの食品スーパーへ行く。食品スーパーの筋向かいにはコープもある。
昼前に、その辺りへ行くと、交差点に面した花壇に独り腰かけて、ロング缶のビールを飲んでいる男を見かける。私より五つ六つ上だろうか。日焼けとはまた違った顔色であるため、判断に迷う。時折、通りがかりの老人が声をかけているため、私よりは上だと考えているのだが。
寒いのに、吹きっさらしの交差点で飲んでいるのは何故なのだろう。それほど話好きには見えないのだが、声をかけていく人がいるのが嬉しいのだろうか。


引っ越してきた30年ほど前。
食品スーパーやコープのある駅前にはベンチがあった。そこに年老いた男や女たちが集まっていた。夕暮れ時分になると、缶ビールやカップ入りの焼酎、日本酒を手にして。彼らの足元には、おこぼれに与ろうするドバトが群れていた。
駅前の再開発が始まったのは、いつだったか。真っ先にベンチは撤去され、人もドバトも駆逐されてしまった。
交差点近くに独り座って飲んでいる男は、嘗て、駅前のベンチにいたグループの一人なのだろうか。
あれこれ思い巡らせていると、なんだか身につまされてくる。
黙って飲むのが常だった私だが、これからも、そうなのだろうか。
座り込んで、道行く人を眺めながら酒を飲む自分の姿が見えた気がした。

昼前に食材を買いに出ても、交差点の方へは近づけなくなった。