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シュレッダー

事業所ごとの可燃物焼却処理が出来なくなったのは30年ぐらい前だったか。以降、書類はシュレッダー処理して可燃物引き取りの業者へ。資源ごみとして出すものもあったが、書類の中身を考えると、シュレッダー行きが、どうしても増えてしまう。
機械の中には事業所用の大きなゴミ袋がセットされている。しかし、それはすぐに一杯になり、警告ブザーと共に回転が停まる。扉を開けて袋の中を見ると、押し込めれば、まだまだ入る。その繰り返しが何回か。これ以上の押し込みはムリだと分かると、漸く、はち切れそうなゴミ袋を取り出し、新しい袋をセットする。取り出したゴミ袋は、所定の位置まで運んでいく。
退職間際、私の席は、シュレッダーの近くだった。
警告音が鳴って、機械の前扉を開け、細断された紙屑を押し込める人を眺める。片手で押し込める人、握り拳の人や両掌で押し込める人、やり方がそれぞれで面白いのだが、袋を取り換える頻度が異常に高い人がいることに、或る時、気がついた。
小柄な若い女性だった。言うべきことはピシッと言うけれど、優しさが感じられる人だった。
袋、換えていること多いですね。
そう声を掛けてみた。
知ってましたか。何ででしょうね。ああ今日もか_って思いますよ。不運です。
袋を取り換えながら、笑顔で言った。

頭が下がる。
こんな人の親切に甘えて、私は生きている。そんな気がしてならなかった。

シュレッダーを使っていて、警告音を聞き、紙屑を押し込む度に、その会話を思い出した。
年度末、いろんなものを焼却炉に放り込んで、何もかも無かったことにしていた頃から、本当は恥じなければならないのかもしれない。
焼却炉の上に広がる空は青く、眩しかった_と思うのも不思議なのだが。