kanashiikimochide

sakeganomitaitoki

ピアス

電車の中で、東急ハンズ三宮店のことを考えていた。
閉店したのは2020年12月。
そんなに時間が経ったのかと思うのは、年寄りの常。考えてみたら、普段の動線から外れるため、閉店後の姿も見ていない。
店が出来た頃は、行ってみると、夢の暮らしが提示されているように思えた。ちょうど子供の頃の百貨店がそうだったように。
ハンズメッセの折りこみチラシを手にすると、その夏が終わったのを感じた。
どこか夢のようだったハンズ特有の雰囲気が、いつの間にか薄れてしまい、ホームセンターと変わらない売り場になっていくのだが……。
今日、電車の中で考えていたのは、ターコイズのピアス。
DIYの売り場ではなく、ちょっとした装身具を扱う一角だった。前を通りかかると、いつも足が止まった。
ネイティブアメリカン風のデザインの中に小さなターコイズが収まっていた。見るたびに商品は違っていたはずだが、星屑のような繊細さに惹かれた。
お気に入りものがありましたら、お出ししましょうか?と声を掛けられたことも。
しかし、綺麗なので見惚れてしまいましたと口籠り、慌てて立ち去った。
ピアスの穴もなく、空いていたとしても、私には到底似合わない。
妻も娘もピアスの穴はない。
それでも、この部分が耳朶を貫くのか_と思い、眺めていた。
ターコイズブルーとシルバーのピアス。


無くなってしまったのは、生活雑貨の大きな店だけではなく、束の間の他愛ない夢も一緒に失くしてしまった気がした。