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ハイボール

15年程前、仕事帰りの角打ちの店で、いつもの日本酒ではなくハイボールを飲んでみたくなった。
夕暮れ前の暑い時間。
それほど客が多くなかったのは、その日が土曜日だった所為か。
ハイボールを_と注文すると、パートのおばちゃんが怪訝な顔をした。常連客の多くが苗字で呼んでいたそのおばちゃんは、変な愛想はない代わりに、人の良さが感じられた。
注文が伝わらなかったようなので、ウィスキーのソーダ割りを_と言い直す。
角をシングルでいいですか?と返ってきた。
見たこともないラベルの細い瓶入りソーダ水を渡される。
ちゃんとクラブソーダとの表示があり、甘いものでないことを確認した。氷はグラスに一個だけ入れてもらった。好きな濃さになるように加減しながら冷たいソーダ水を注ぐ。瓶にはまだ半分くらい残っていて、それは2杯目の御代わり用だった。
サントリーの大々的なCMは未だ始まっていなかったのだろうか。小雪さんや菅野美穂さんの出ているCMの印象が強いが、調べてみると、時期的には微妙な感じだ。
私が学生の頃は、ウィスキー・コークというのが流行っていた。私はそれがどうも苦手で、水割りかロックにしてもらった。もっと上の世代は、ハイボールはトリスに決まっていた_と親に聞いた。
角打ちのおばちゃんは、私が思っていたよりも歳上ではなく、私とそれほど違わなかったのかもしれない。


すっかりテレビを見なくなってしまい、井川遥さんのCMは殆ど見ていない。
それでも、彼女が一番好ましく思えるのは、酒屋がくれるオマケの写真を眺めているだけだからなのか。
一連のCMに共通する変な小芝居を伴う人物設定は、誰が喜ぶのだろう。
昔、ハイボールのCMではないのだが、市川崑監督の手になるものがあった。美しい映像だったが、それもひどくイヤだった。商品化された媚を含んだ眼差しやセリフ回しが、今も昔も多分苦手なのだ。