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sakeganomitaitoki

歌う人

発症から5日間の自宅療養。
それが終わって2週間が過ぎた。
体調は元に戻っているのだが、気持ちは落ち込んだまま。
溜息の大きさに、自分でもハッとする。その一つ一つを潰していくつもりで、メインブログや外出ブログ用の英文を作っている。いつ公開するのか、全く分からないのだが。

早朝、6時前に駅に着くべく歩いている人の中に、スマートフォン片手に歌を歌う人がいる。以前は、人の姿を目にすると、歌うのを止めたり、マスクで顔を隠していたのだが、もう何か吹っ切れたようだ。私がオバサンになっても。100パーセント勇気。会いたくて会いたくて。と歌い続けている。
立派な体格。白髪頭ではあるが、私よりは20近くは若いのではないか。50メートル以上離れていても歌声が聞こえるほど。あるときは、電車を一台やり過ごしたのか、プラットホームの一番先頭、一番外れに立って歌っていた。山間の駅の構内は、道路よりも遥か下。上下線は谷底にあるような形だから、歌声はさらに響き渡る。
放歌高吟なる古臭い言い回しを思い浮かべた。

人の愉しみについて、とやかく言いたくないし、また言われたくもない。こんな人がいるのだと思いながら眺めているのだが。
どんな気持ちで彼は毎朝歌い続けているのか、今日は、そんなことを夢想した。
アニメ番組の主題歌かと思うような元気な歌が多い。それを大声で歌って、勤めへ向かう。
出勤時・就業前の一種の儀式。そう考えると、なんだか、とても悲しい気持ちになった。どんな仕事なのか。
ひょっとすると私の同業者?
退職前の辛さ・遣りきれなさが甦ってきて、そこで考えるのを止めた。