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ささやかなもの

このところ視かけて止めてしまう映画が増えた。
録画していたものを数分視ただけで消去。
その多くがホラー映画。
思春期以来のグロテスク趣味は失せてしまったのか。
しんどいと感じるのはグロテスクなホラー映画ばかりではない。
全世界、或いは全宇宙の運命を、一人、二人の若者が背負っているという物語。予告編で、どんなに美しい映像を見せてもらっても、最初から諦めてしまう。
特別な能力が備わっている選ばれた者
ファンタジーで、よくある設定なのだが、それが既にしんどい。ホラーばかりか幻想譚もダメなのかと思い始めると、それを追いかけてきたこれまでの時間は何だったのか。分からなくなる。

英雄や武将という一種の狂人の夢に、多くの人は酔い、巻き込まれていくのだが、その流れには乗れない冷めた人達もいたのではないか。
大うつけと、彼の側に集まる血走った者たち。物語も歴史も、そんな話ばかりだが、そんな集団を遠くから眺めるだけで、自分もまたそこへ_とは思わない人々もいたはずだ。蹄や軍靴で踏み荒らされた土地を、それでもまた耕して生きていく。そんな人たちの日々を夢想していると、そこには辛さだけではなく、ささやかな喜びもあったのではないかと思えてくる。
一日を終えて見上げる夕空は、昔も今もこれからも変わらないだろう。
たいそうな物語の裏で消えていく人々を思うと、これまで気づかなかった夢が広がるようだ。

特別な何ものかは欲しくない。普通の人々のささやかな美しさと愉しさを語り聞かせてくれるもの。そんな物語や映画を探している。