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飲んでいて楽しくなったことを

悲しい気持ちで飲むばかりではなく、飲んでいて楽しくなったことも記していく。

3月。
また寒さが、ぶり返すという予報があり、母の命日には未だ日があったが、一人で墓参りした。
歩いて汗をかいたので、昼食時、珍しく瓶ビールを頼んだ。
久しぶりの三宮の飲み屋。
アテはカキフライ定食。これも久しぶりだ。
注文を聞いてくれたのは、茶髪の若い女性。カキフライをアジフライと聞き間違えたのに気づいて訂正してもらった。
まだ慣れていないのか、彼女は、いろんな失敗をしていた。
電気ポットの湯がなくなりかけていたのだろうか、蓋を開けようとして、火傷しそうになる。先輩のお姐さんたちから、大丈夫?と声をかけられていた。
その後、ポットがなかなか沸かないのに気づいたお姐さんの一人が、あの子、水を入れたんやろなと言った。
この洗い場のこっちの蛇口からは、お湯が出る、反対側は使うことないから覚えといて。そんな指導があった。
山かけマグロって、ありますか?
お客さんから訊かれたのだろう、奥の調理場に尋ねている。
先輩のお姐さんが、あるよー。刺し身の入っているところに。

今日が初日だったのだろうか。そう思いながら、私は、瓶ビールを飲み終え、酒一合と刺し身三種盛りを追加注文した。
昼食の混雑時が過ぎて、店に残っている客は、私のような一人飲みの老人ばかり。
早番だったお姐さんの一人が、店を後にした。
代わりに茶髪のショートカットのお姉さんが一人、既に到着済。
ゆったりした時間が出来たのだろう、新米さんを囲んで、お姐さんたちが話をしている。
しんどかったやろ。
わからんことばっかりやもんな。
すぐに慣れるから。
そんな声掛けの混じる談笑が続く。
不慣れ、失敗を詰るのではない。一緒に働く者へ向けられる温かさが、なんとも心地良かった。
孫娘の仕事ぶりが心配だった祖父のような気持ちなのか。
食べ終わって勘定を済ます時、お姐さんの一人に、
やさしい声掛け、聞いていて、幸せな気分になりました
と伝えた。
辞めずに、続いてもらいたいですから
マスクの上の目が笑っていた。
次はいつになるか分からないが、また来ようと思った。